Malus Pumilaがアンサンブル上で大切にしているのが、セクション毎のニュアンスやダイナミクスの対比をはっきりと付けることです。
She Loves Youを例に説明すると、冒頭の”She loves you yeah yeah”と歌われる箇所は、元気いっぱい歌い、躍動感のあるビートで演奏しなきゃいけないんだけど、その後、”You think you’ve lost your love”からは、少し落ち着かせなくてはいけない。
前者がフォルテッシモで、突っ込み気味に演奏されるとすれば、後者はメッゾフォルテでオン・ビート、躍動感は抑えて、”ordinary”な感じで歌い演奏しなければならない。そのように対比を付けるからこそ”She says she loves you”の箇所でリンゴが叩くシンコペーションや、その直後のジョージのギターの「衝撃」が生きるわけです。
それを勢いにまかせて最初から最後まで元気一杯に演奏するとこの対比が生きずにまったく面白くない演奏になってしまう。このあたりが、俗に「海苔」といわれる、コンプレッサーで潰してダイナミクスやニュアンスが均一された現代のロックとビートルズが異なるところですね。