Singles


Love Me Do (Lennon/McCartney, 1962)

Key of Gの3コードを基調としたブルーズライクな楽曲である。だがbVII の和音が終止に使われている点が伝統的なブルースと異なる。また、bVIIは初期から後期に至るまで、すべての時期におけるビートルズサウンズを特徴付けるコードでもある。余談となるが、ジョンは本当にハーモニカが上手く、5小節目で巻き舌の要領で舌を震わせることでトレモロ効果を得るフラッター・ツンゲと呼ばれる奏法をしれっと披露している。

Please Please Me(Lennon/McCartney, 1963)

“Please please me wow yeah”と歌われる箇所でジョンとポールの声部が交差しているため、聴感上は主旋律がジョンからポールへと受け渡されているように響く。つまり、ビートルズのコーラスワークは主旋律とハーモニーが主従の関係にある「ハモリ」ではなく、全声部が同等の関係で拮抗しあうポリフォニーの感覚に近いものと言えよう。ワシントンD.C.などのライブテイクではジョン一人が「主旋律」を歌っているが、これはレコードとライブの音響の違いを考慮したアレンジだと筆者は予想している。

From Me To You(Lennon/McCartney, 1962)

『アンソロジー』の中でポールがGmから始まる中間部のコード進行を思いついたときの喜びを語っている。中間部はGm→C7→F→D7→Gという進行、近親調からの借用和音の連続で特に珍しいものではないのだが、若かりし頃のポールにとっては、世紀の大発見であったことは想像に難くない。初期後半から中期にかけて、ポールの作風はしだいに職業作曲家のそれに近づく。そのこととポールの作曲修行時代の体験は無関係ではないだろう。

 She Loves You (Lennon/McCartney, 1963)

ジョージのギタープレイはあまりに過小評価されている。たしかに技巧的にはさほど難しくなく、さもすれば聴き流してしまうことも少なくない。しかし、ジョージが弾くオブリの無いShe Loves Youなど考えられるだろうか。

映画 Eight Days A Weekの中にジョージが“I play ‘SOLO’ guitar”と自己紹介するシーンがある。地味だが気の利いたフレーズを要所に入れることのできる、ギタリストとしてのジョージの自信と誇りが垣間みられる名台詞と言えよう。

I Want To Hold Your Hand (Lennon/McCartney, 1963)

曲全体はイーブンの8を基調として いるにもかかわらず、ジョンの演奏す る、5度と6度を交互に繰り返すいわゆ るロックンロールリフのみがなぜかシ ャッフルしている。ジョンも他の場所ではイーブンで刻んでおり、不思議な 演奏としか言いようがないが、その結 果生み出されるグルーヴは独特で我々 コピーバンドが真似しようとしてもな かなかできない部分なのだろう。