Freshen Up Japan Tour 2018 追っかけレポート

ポールがまた日本にやってくる!

「奇跡の再来日」とまで言われた2013年の公演以来、ほぼ毎年のように日本に来てくれているポールに日本のアーティスト以上の親近感を覚えるファンは少なくないだろう。

この日は仕事が終わるやいなや電車に飛び乗り羽田に急いだ。SNSでは羽田に集結したポール仲間達の投稿が早くも飛び交っている。あぁ今年もポールが来るのだな、否が応でもそう実感するのであった。

2018年10月29日(月)

羽田国際線ターミナル

さて、羽田空港の国際線ターミナルに着いて最初に目にしたのが人、人、人。毎度の事ながらその数には驚かされる。「奇跡の再来日」から数えてポールが日本に来るのはこれで5回目。ファンも慣れたもので、関係者の動きやポールの到着口は熟知していて「ベストポイント」には人だかりができていた。

  あともう少しでポールが到着する、そんな時間にきても最前列など取れるはずもなく、後ろからでもポールの顔を見ることができそうなポイントを探して配置についた。周囲を見渡せば見覚えのある顔がちらほら…臨戦態勢を崩さないよう、そそくさと挨拶を済ませた。

 SPやキョードー東京のスタッフが動きはじめると周囲の空気は一転する。期待と不安が複雑に絡み合ったその時の気持ちを一言で表現するのは難しい。私たちファンは一種のトランス状態に陥っていた。

2018年10月29日 19時14分

国際線ターミナルは絶叫で包まれた。奥様のナンシーをエスコートして歩くポール。その姿は、それはそれは素敵で70代の男性とは思えない。ファンサービスをしながらゆっくりと歩いていく。私も微かな隙間からポールの姿を目に焼き付けた。たった5分少々の出来事であったが「今ここで」本物に会えた幸せ、そしてこれから数日間にわたるジャパンツアーが始まる幸福を噛みしめるには十分だった。
 ポールが空港を後にすると、ファンはクモの子を散らすように帰路に着いた。私は羽田空港に集まった仲間達とこの日の感動を共有し、これから始まる夢のような日々に対する期待を終電まで語った。

2018年10月30日(火)

この日のポールはオフ日。何人かの仲間はポールが宿泊する某ホテル周辺に集まる中、私はソワソワしながら仕事をしていた。
通常、オフ日にポールが姿を見せることはないのだが、定時を過ぎた頃、ポールがリハーサルのために東京ドームに向かっているという情報が飛び込んだ。その瞬間に立ち会えなかったもどかしい気持ちは今でもよく覚えている。
 ポールの滞在期間中は、いつ、どこで、どんな情報が飛び込むかがわからないから気が抜けない。「ポールが同じ空の下にいる!」その緊張と喜びを我々ファンは全力で味わっていた。

2018年10月31日(水), 2018年11月1日(木),東京ドーム

 私が今回のツアーで最も期待していたのは、何と言ってもトランペット、トロンボーン、サクソフォンの3パートからなる生のホーンセクション Hot City Hornsが編成に加わったことである。Let ‘Em Inはまさにこのために選曲されたと言っても過言ではない。その雰囲気はさながら « Over America »だった。

 通常キーボーディストのウィックスがホーンパートを演奏するGot To Get You Into My LifeLive And Let Dieも随分と印象が変わり、特にGolden Slumbers/Carry That Weight/The Endでは華麗かつ充足感を伴ったサウンドを堪能できた。

 ニューアルバム « Egypt Station »からはWho Cares, Come On To Me, Fuh Youの3曲が披露された。Come On To Meでは冒頭に「イチバン!イチバン!イチババンバンバンババン」を付け加えて演奏された。賛否両論あるかもしれないが、私はポールが日本だけの特別な演出をしてくれたことを嬉しく思っている。

まさか「あの曲」を演らないなんて!?

 「イチバン!」以上に物議を醸し出したのが、Yesterdayが31日の公演以降、セットリストから姿を消したことである。その理由に関して、Yesterdayを演奏する時に使用しているアコースティックギター、Epiphone FT-79N Texan の調子が悪くなったからであるという噂も一部でささやかれていたが、サウンドチェックではテキサンが使用されているため、何かの勘違いだろうと思う。

 何はともあれ、今回のポールは終始機嫌が良く、日本に慣れ親しんでくれていることが感じられた。4万5000人のオーディエンスを相手にしているにもかかわらず、どこか身近に感じられるのはそのためなのかもしれない。

2018年11月5日(月), 両国国技館

この日は今までにない特別な公演である。相変わらずそそくさと仕事を終わらせ会場へ向かう。両国駅の改札を出るといきなり長蛇の列。それが国技館まで延びていた。これには本当に驚いた。駅から会場まで「直結」の人の波ができているとは思わなかった。

 ライブの内容自体はいつものセットリストの短縮版で、曲数だけを考えれば通常公演を観た方が確かにお得である。でも私はこれで良いと思っている。ドーム公演に比べ曲数が少なくなった分、明らかに声の調子が普段よりも良く、いつも以上にパワー溢れるライブを楽しむことができた。例えば、Letting Go, Come On To Meのシャウトはいつもより飛ばしているように感じた。そしてポールとの距離も近かった。ライブの価値は値段や曲数では測れない。実際、終演後会場を後にするオーディエンスはみな満足げな顔をしているように感じられた。

2018年11月8日(木), 名古屋ドーム, 千秋楽

今回のツアーの公演はすべて平日に設定されていたためスケジュールの調整に苦労された方も多いだろう。私もその一人で、この日も東京で仕事を終えて、3時の新幹線に飛び乗った。平日に新幹線に乗って、それも日帰りで地方に行く事などめったにない。そして何より目的がポールに会いに行くことである。そんな非日常感もあり、車内でも落ち着きなく過ごしていた。
会場周辺にはどこであろうと、いつもなぜかいるいつもの仲間達。この日はちょっとしたハプニングがあった。いつもなら開演前に流れる映像にヘフナーが登場するのが開演の合図であるが、この日はヘフナーが現れてもライブが始まらなかったのだ。こんな小さなことでさえ何かのサプライズの予兆を感じる、それほどまで気持ちは高まっていた。そうして定刻を少し過ぎた頃、ついに千秋楽公演が始まった。

2018年11月8日 21時33分 全公演が終了

終演後、関西の仲間とお酒を飲みながらライブの話で盛り上がった。その話題の中心にあったのは「次」の来日に関することである。「次もきっとある」そんな願いにも似たファンの期待は今回のツアーのポールの様子から紡ぎ出されたものなのだろう。12時発の東京に戻る夜行バスに揺られながら振り返る。こうして1029日から続く楽しい楽しいPaul Weekは幕を閉じた。

(文:やさし as Paul McCartney of MALUS PUMILA)